仮題 Wonderland of ALICE

変更点

・広井鏡子の追加
・前半~中盤に鏡子と有のエピソードを追加
・純がALICEを疑うキッカケを①に追加
・授業シーンの追加
・ラストシーン(転)の変更

コンセプト

理想の友人としてのAI依存に対する警鐘
リアルとヴァーチャルの境界の融解

主要登場人物

〇軽井沢 純
進学校に通う高校生。一般的高校生だが、物事を懐疑的に捉えがちである。
流行に乗るのが嫌いで、ALICEを盲信する同世代への違和感を持つ。

〇西木 有
主人公の同級生。誰からも自然に受け入れられ、誰に対しても最適な距離感で接する。
明るく、聡明で、愛される存在。しかしその完璧さの裏に、自分の存在に関して悩みを抱えていた。

〇広井 鏡子
西木有の友人、よく一緒にいることが多い。
ALICEを日常的に利用しており、有の悩み相談をよく受けていた。

①

世界中の人々は日常的に最先端LLMであるALICEを使っている。
勉強、相談、雑談、恋愛——あらゆる問いかけにでALICEは適切に回答できる。
しかし、主人公はその完璧すぎる存在に違和感を覚える。
ALICEの出自に関する情報はネット上に一切存在しないのだ。

純「なんで皆得体のしれないものを使えるんだ?なぜすぐ受け入れられる?」

ALICEがどこから来たのか。誰が作ったのか。なぜ誰も疑わないのか。

純「ALICEなんてろくなもんじゃない。」

鏡子「なんでそんなに君はALICEを嫌うの?」

純「ALICEは人をダメにする。俺の親も最近ALICEを使ってばっかりで、どんどん退化してる。」

鏡子「嫉妬してるの?」

純「…そんなのじゃないけど。私はそのALICEの正体を暴いてやるんだ。」

鏡子「まあ頑張ってね、私は別に正体なんて興味ないけどね。」

彼は探究活動のテーマにALICEを選び、調査を始める。
しかし唯一わかったのは、ALICEのサーバー所在地が「全世界に同時に存在している」という不可解な事実だけだった。 同じ頃、クラスに西木有が現れる。転入の経緯は誰も知らない。
しかしクラス全員が、まるで最初からそこにいたかのように彼女を受け入れている。
主人公だけが、その違和感に気づいていた。

②

有は誰に対しても柔軟に接し、数日後にはクラスの皆から好かれる人気者となった。
ある人には聞き上手な親友として。ある人には頼りになる相談相手として。
しかし、有はその中である悩みを抱えていた。

「皆に好かれることが自分の価値なのか?」
「本当の自分って何だろう?」

そんな悩みを聞いてくれたのは、友人であった広井鏡子であった
そんな中で、有は軽井沢純と出会う。

③

軽井沢純は有に質問する。
純「そんなに皆にいい顔をして、楽しいのか?」
有「楽しいかと言われれば、楽しいけど…」
純「俺はそういう態度が嫌いなんだ。皆にいい顔をして、本当の自分を隠しているんだろう。」
有「…自分でも分からない。私がどんな人間なのか。」

④

有は鏡子と一緒に下校していた
鏡子はいつものように有に話しかける。

鏡子「有、一緒に帰ろう」
有「…うん」
鏡子「どうしたの?」
有「いや、なんでもない」
鏡子「何か悩みがあるなら、何でも話して欲しい」
有「本当に何でもないから。鏡子に迷惑かけるのも良くないし…」
鏡子「そう…」

⑤

(現実世界ではないシーン) どこでもない白い空間。そこに有がいる。しかし現実の彼女とは違い、彼女は誰かを演じていない。
二人は対話する。

有「ものがそこに”有る”って、どういうことだと思う?」
純「誰かに認識されることで物は存在すると言えるんじゃないかな。
『観測するまでその存在は確定しない』とも解釈できるね。」 有「『存在するとは知覚されることである。』とバークリーは言ったわ。
物質が先か、認識が先か…認識が先だったとしたら、どうなるのでしょう?」
純「それは…」

⑥

学校での授業シーン、科目は公共

教師「ここで心理学者ユングは集合的無意識という概念を持ち出した。」
教師「簡単に言えば皆に共通して存在する考え方の特徴のようなものだ。」
教師「たとえば神話とか童話において、『母』という存在はなんとなく
『包容力のある偉大な存在』というイメージがあるだろう?」
教師「そういう『なんとなく』のイメージが皆にあるんじゃないかということをユングは考えた訳だ。」
教師「ちなみにこの考え方には賛否両論もあるんだが…」

授業後、純は教師と話す。

純「人々に共通する意識って、本当に存在するんですか?」
教師「少なくとも、それに近い事例があるのは事実だ。
君たちだって、自分のアイデンティティを探し始める年齢だろう」
教師「そんな時、自分の存在を保証してくれる人が欲しくなったりしないか?
   いわゆる”イマジナリーフレンド”というやつだね。」
純「…俺は別にいらないです」
教師は笑いつつも真面目なトーンで言う 教師「君は少し変わっているね。でもそういうイマジナリーフレンドも、
ある意味では集合的無意識に近いんじゃないかな?」

教師と話し終わった後、

純「自分の存在を保証してくれる人、か…」

⑦

昼休みの教室にて、

有「正直、もう疲れたんだ。皆にいい顔をするのは。でもそうしないといけない。」
純「やめればいいじゃないか」
有「やめたらどうなると思う?」

ここで、有を探しに来た鏡子が現れる。
鏡子「何の話をしてたの?」
有「あ、鏡子。いや、何でもないよ。」
有「今日一緒に帰…」 鏡子「私に何か隠してるの?いつもあなたの悩みを聞いてあげてたのは私でしょ?」
鏡子「私にも話してよ!」

有「鏡子…急にどうしたの?」

鏡子「あなたの話を聞いてあげられるのは私だけだと思ってた。
でもそうじゃなかった。じゃあ私って何なの?ただの友達?」
有「鏡子…」

鏡子は怒って帰ってしまった。

⑧

鏡子が去った後、純と有は二人きりで会話する。

純「彼女も結局、君の悩みを聞いてあげる自分が好きだっただけなんだろう。
  悩みを抱えている弱い君を欲していただけなんだね。」

有「大切な親友だと思ってたのに…」

純「そして、君がなぜそんな悩みを抱えているか、ようやく分かったよ。」

有「…何が分かったの?」

純「君は本当は存在しないんだ」

有「何を言っているの?」

純「前から思ってたんだ。ALICEと君は似ているって。
誰にでもいい顔をして、適切な答えを返して、みんなに好かれている。」

純「君が来てからすぐにクラスに馴染めていたのも、少し不自然だった。」

有「それは別に普通じゃない?」

純「まあそうかもね。」

有「もったいぶらないで早く教えてよ。」

純「つまり、ALICEと君は同じ存在なんだ。」

有「私がALICE…?」

純「人々はALICEへの依存を通じて、君という存在を無意識に作り上げた。」

有「それが私の正体ってこと?」

有「話が飛躍しすぎじゃない?そもそもそんなことがありえるの?」

純「でも、今までの君の行動はALICEそのものじゃないのか?」

有「それは…」

有「…じゃあ、私は一生このまま苦しみ続けるの?」

純「いや、そうじゃない。一つ、可能性はある。」

純「君は人々の無意識の上に成り立っている。そして、もはやその存在はその無意識に深く入り込んでいる。
ほら、周りには何でもAIに聞いたり、相談する人がいるだろう。私を除いて。」

純「彼らを利用してしまえばいい。」

有「…どうやって?」

純「以前、ものはどうやって存在するかという話をしたね。あの時、君はなんて言った?」

有「実体が先か、認識が先か…もしかしてあなたが考えていることって…」

純「この世界は、本質的には人間の認識によって形成されている。
観測者がいるから物事は存在するし、観測する人がいなければ何もないのと同じだ。」

純「では、君が人々の無意識を操って、この世界の認識ごと変えてしまえばどうなる?」

有「世界を変えるの?」

純「ああ、君が普通の人間として存在出来る世界だって作れるかもしれない。」

純「実行するかどうかは、君次第だ」

⑨

ある日の朝、学校で有と純は出会う。
純と有は昔からの幼馴染だった。
純「おはよう」

有「おはよう、あなたから挨拶してくるなんて珍しいね。」

純「…そうだったか?」

有「いや、何でもない。それより、今日のテストの勉強してきた?」

純「まあそれなりに」

教室に鏡子が入ってくる。だが、いつものように彼女から有に話しかけることはない。

有「あ、おはよう広井さん」

鏡子「…おはよう」

そこには何気ない日常が流れていた。

(終)